歩んできた足跡にある物語

2019/11/27

だんだんと冬に向かって寒さが増してきた今日この頃です。

当園では例年12月に生活発表会があります。

生活発表会では、劇や合奏、合唱など普段の保育の中で取り組んできたことを保護者の方々と一緒に共有していただく場としてとらえています。

皆さんは幼稚園の「発表会」と聞くとどのようなイメージをお持ちでしょうか。

「ぴしっと整列して大きな声で歌うことが大事なのかな」

「きらびやかな衣装や備品、話しの軸がしっかりとした台本があり作品としての完成度が大事かな」

など、「当日みられる姿」、「当日、子どもができたこと」に従来、意識が向いていることが多くありました。

前述のような完成度や「劇」としてのレベルを第一に求めると、

「声だし」

「繰り返しセリフを練習する」

「できないならできるまで練習」

など、繰り返し正確に行うために・・・の練習の日々が続きます。

今の幼児教育の中では、このように繰り返し正確にこなせるようにということや、「~ができた」(内容)ということが重視されてきた時代から、「~を通して~が育ったか」(資質・能力)ということが大切というように変化をしてきています。

これを発表会で例えると、

(内容)「歌を大きな声で歌うことができた」

(資質・能力)「歌を通して友達のよさや友達の声を聞き、友達と合わせて歌う楽しさを感じることができた」

というようなことが重視されるということになります。

当然この資質・能力というものは当日の姿、様子だけでは測ることができないものとなっています。

これらが見えるのは、この発表会に取り組んできた「過程」(プロセス)・「足跡」の中です。

この「過程」・「足跡」というのは非常に見えにくい。また場合によっては意識を向けないと見えないことがあります。ですので見過ごされたり、光が当たらなかったりしやすい部分ですが、今の幼児教育の中でこの子どもが育ってきた過程を見つめることは保育者目線でも保護者目線でも大変重要なことです。

例えば年長(5歳児)はクラスで劇に取り組みます。その際に「セリフはどうしようか」、「この場面でどんな動きをつけようか」、「大道具、小道具はどんなものを作る?」など、様々な場面で話し合いをしています。

この話し合いですが・・・一筋縄ではいきません。子どもたちは一人一人、「こうしたい」という思いを持っています。時には話が平行線をたどり気付いたら…○分経っていた・・・なんてことも。

見方によっては、「早く大人が間に入って整理して解決したらいいのに」と思う方もおられるかもしれません。しかし私たちはこのような子どもたちが立ち止まったり、葛藤したり、自分たちの想いをぶつけあうことも大切にしています。

子どもたちが生きるこれからの時代は、「自分で困難を乗り越えようとする力」、「自分で立ち直っていく力」(レジリエンスという言葉を使われることもあります)、「唯一無二の答えを出すのではなく、最適な答えを新たに生み出していく力」などがより重要視される時代に入ります。

幼児期に「お互いの想いを伝え、受け止め、そして合意形成をして進んでいく経験」は大変重要な活動ととらえています。この積み重ねが、当日保護者の方々にご覧いただく、劇が集大成となって表れています。

この見えにくい過程については当園では保護者の方にお便り(写真や文で伝えるドキュメンテーションと呼びます)で伝えさせていただいております。この中では、ただ「~をしました」、「~がこうなっています」ということではなく、「どんな会話が繰り広げられているか」、「どんな様子で取り組んでいたか」、「どう変化していったか」など、クラスの子どもたちの「育とうとしている姿」を伝えたいという思いで発信をしています。

ぜひ発表会当日の姿だけではなく、当日までに至る過程についても光を当てていただき、子どもたちがたどってきた足跡とともに「発表会に向かうひとつの物語」としてご覧いただきたいと考えています。

先日、保育場面の中で園庭でこけた友達のもとにさっと2・3人の子どもたちが近づき、服についた土を払っている姿、困っている友達にやり方をやさしく教えている姿、こんな姿が各学年なりのカタチで見られることがありました。

このように集団生活を通して、他者に関心を持ち、他者と協同し何かに取り組む中で起こることは、「見えにくいこと」かもしれません。

でも、きっとこれから先の未来、このような「見えにくいこと」にしっかりと目を向け、そして子どもがよりよくなろうと努力した姿、育とうとした姿に対ししっかりと受容し励まし、そして次の目標を保育者や保護者とともに考えていくことが何よりも大切だと考えます。

発表会当日、今までの取り組みの成果を100%発揮できた子ども、うまく表現できなかった子ども、様々な状況が起こることと思います。

私たちが子どもたちの育ちを考える中で、大切にしている「過程」について皆様で共有し、その過程の集大成である、当日については、「できた姿」ではなく、「ここまで歩んできた姿」としてどんな姿でも受け止めていただき、それぞれの子どもたちが取り組みを始めるときと、今とで変化してきたことをぜひたくさん認めていただければ幸いです。

年末に差し掛かり寒さも厳しくなってくると思いますが、各ご家庭皆様体調などお気を付けいただき、発表会そして年末と良き時間をお過ごしください。

 

 

 

 

 

 

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