ふたば通信

子ども自らが作り出す過程(成長展で思うこと)

本年度も残り約1か月少しとなりました。

3学期の取り組みの一つとして「成長展」というものを本年度から実施をします。

成長展とは、子ども一人一人の成長や作り出した作品だけではなく、クラス(集団)として、どのように1年間、その場所で遊び、

どのような気づきなどを経て歩んできたか、保護者の方と共有したい!という思いから、実施するものです。

 

この成長展にはいわゆる「子どもの作った作品の展示」も含まれますが、それだけではなく、保育室の中で展開してきた遊びや、子どもたちの興味関心の足跡が分かる掲示などがあります。「造形展」や「作品展」とは違う位置づけで行っています。

かつては、全国の幼稚園の「造形展」、「作品展」などでよく見られた姿は、「完成品を飾る」、「子どもの作品が映えるように保育者がしつらえに注力する」など、子どもの作品をある種、お客さんのように扱うことがありました。

また、場合によっては完成品を作るために、保育者が過度に援助を行うがあまり、結局「大人の作品」となってしまうということもありました。

そのような過程を踏まえて、行事当日に出された子どもの作品や会場のしつらえは、果たして誰のためになっているのか。またその当日のしつらえに向けて、多くの時間を保育者が割くことで、果たして子どもたちのために時間を使っていくことが大切な中、ベストなのだろうか。ということが、幼稚園教育要領の変遷などもあいまって、さまざまに議論されてきた経緯があります。

当園ではそのような経過を踏まえ、成長展では、

「子どもの思いや考えがあふれる展示・環境」

「子どもの文字や作品、生活の中で生み出したものがみられる展示・環境」

「未完成のものや創造(つくる)と破壊(壊す)を繰り返した過程がみられる展示・環境」

等が大切と考え、保育室の展示を考えていきました。

 

例えば上記の写真は、あるクラスの子どもたちが魚釣りに関心を持ち、自分たちで道具などについても考え、そして保育者もその環境をともに楽しみながら作っていった「跡」となります。当日は、子どもが日々遊んでいる様子を感じていただけるよう、道具や玩具、環境をそのままにおいているクラスもあります。ぜひ壁に掲示された説明(ドキュメンテーション)とともに、その場で展開されている遊びや、活動に触れていただければと思います。

今回の成長展では、園内に子どもが生み出したもの、子どもが書いた字など、様々に作り手が子どもであるものが多く見られます。

その一つ一つに子どもが作ろうとした意図や背景が浮かびます。

このようなことも、子どもたちが保護者の方と、対話するきっかけになってもらえればと思います。

成長展では、決して完成された作品を出す場と考えておらず、作りかけのもの、作ったが一度壊したもの、明確な目的があるわけでは無く遊び続けた結果生まれたものなど、様々な状態のものがあります。その中には大人の価値観や判断では、「これなにやろ?」、「もっと~したほうがいいんじゃないか」というような思いが出るかもしれませんが、子どもがどのような思いや考えで、遊びを続けてきたか、対話することで、子どもたちそれぞれの描く世界観にも触れていただく機会となれば…とも思っています。

子どもだけが見えているもの

子どもだけが聞こえているもの

子どもだからこそその発想ができたこと

 

子どもの世界・見え方・感じ方をぜひ、活動の足跡を見ながら保護者の皆様も感じていただければと思います。

 

そして、もう一つは1年間、クラスでさまざまに展開されたプロジェクトや、興味関心、そして行事とのつながりに関する展示です。

例えば発表会の際に、子どもたちが話し合い作った小道具や、関心が高い遊びが発表会につながったというようなものです。

遊び同士のつながり

遊びから行事へのつながり

子どもどうしのつながり⇒協同へ

このような観点も大変重要な幼児期の育ちと考えます。

成長展を通して、子ども一人一人の育ち、クラスの中での子どもの育ち、そしてクラス全体としての育ちと、

子どもの「できた」だけではない、「やろうとした」、「がんばろうとした」などという、

経過・過程・プロセスに込められた思いがあふれる場となればと願っています。