ふたば通信

自分の思い 友達の思い

1学期も後半に入り、子どもたちもクラスや活動にも慣れてきました。

幼稚園では、20名を超える集団の中で多くの時間を過ごすことになるため、自分のやりたいこと、自分の願っていることを、必ず達成できないという場面が多くあります。

 

そのような経験を通して、「折り合いをつける」、「どうしていくか、相手や集団と合意する」、「場の状況を把握して納得する」という

ことを、子どものそれぞれの発達の過程の中で、培っていきます。

 

大人の社会でも上記のことは、日々の家庭生活や仕事など、人と人が接する中では大変重要な要素であると思います。

そして、大人の社会では、「話し合い」、「会議」、「面談」などの場面で、前述のようなことはみられると思います。

 

しかし、子どもの世界では、実は「設定された場」以前に、遊びや生活の中で、互いの思いを知り、そして折り合いをつけたり、場の状況に応じて、友達とともに遊んだりする場面が多くあり、その場面を通しての成長が見られます。

 

例えば、砂場での遊びを例に考えると・・・

 

A児:フライパンを上下に振り、砂を何かに見立てて炒めているようである。

B児:水をコップに入れて、砂にかけている。水が砂にかかる瞬間を、じっと見ている。

 

という場面があったとします。

もしB児がA児のフライパンの砂にも、水をかけるということをすると、

A児は「やめて!」という可能性が考えられます。

この「やめて!」に、もし気持ちや思いを表す文章を添えたとすると、

「私の遊びは砂を料理に使っているの!水をかけたら固まって使えなくなっちゃうじゃないの!なんてことするの!」ということになるのではないかと考えます。(*場面や状況にも、もちろんよりますが)

この場面のA児、B児双方の行動は、相手を攻撃したり排除したりする意図はないと考えます。

自分の「遊びに求める面白さ」や、「自分がしたいこと」を行おうとした中で、ほかの子どもの遊びに求めるニーズと、たまたま異なったため、「やめて!」ということにつながったと考えられます。

このような「遊びに求める面白さ」や、「自分がしたいこと」が多くあらわれる場面が、幼児教育で最も重要とされている「遊び」です。

保育者や大人主導ばかりで行う活動や、製作手順がすべて決まった活動では、円滑に活動や行動が進みやすく、このような思いの違い・ずれ、段差などが生じにくいです。一見スムーズに見えますが、前述の学びの機会は少ないといえます。

 

この「思いの違い」や「思いのずれ」があるからこそ、「自分の思い以外に友達の思いがあること」を知ります。

そして、その違いや、ずれに対して、意見や思いを自己主張し、けんか、いざこざが起こり、折り合いをつけないと進まないということに、つながっていきます。

このような過程・経験がとても重要です。

一見、けんかや言い争いはネガティブな出来事としてとらえがちですが、子どもたちはこの経験を積み重ねる中で、様々な主張する方略・方法を培っていきます。

先行研究では、非言語的で自己中心的な自己主張方略から、言語的で自他双方の要求を考慮した自己主張解決方略へと変化しているといわれています。(山本,1995)

つまり、はじめは自分勝手な主張、自分の利益を獲得することに重点を置いた主張が多い時期から、このような経験を通して、

友達の思いや考えも考慮したうえで、「依頼」、「交渉」、「提案」などを行うなど、相手の思い、場の状況など、自分の意見以外の存在も踏まえて、主張するという成長が見られます。

しかし、このような経験は、楽しい場面ばかりではなく、時にはしんどく感じたり、難しく感じたりするなど、パワーを使う経験であると考えます。

幼稚園では、子どもたちが、思いや考えを言葉にし、そして友達の存在を意識したうえで、主張したり相手の思いを受け止められたりする機会を、学びの機会ととらえ、子どもの育つ場面を支える援助を行っていきたいと思います。