学ぶということ 育つということ~VUCA時代に思うこと~

2020/12/04

教育の世界では必ずといって聞こえてくる言葉として、「学んでいる」、「育っている」という言葉があります。

教育の歴史的な経過をたどると、かつては「教授する者(先生など)の伝えることを正確に覚えたり、それに基づいて行動できたりすること」が重視されている時代がありました。いわゆる「言われたことを繰り返し正確にこなすことが出来る」というように表現できるものです。

しかし、現在はVUCA時代という時代に突入しているといわれています。

V:Volatility(変動性)

U:Uncertainty(不確実性)

C:Complexity(複雑性)

A:Ambiguity(曖昧性)

 

この4つの単語の頭文字をとった言葉です。

これからの時代、唯一無二の一つの答えを求めるというようなことでは解決、クリアしていくことが出来ない課題がより多く出てくるということが予想されています。例えば昨今、世界中で感染拡大が続いている「新型コロナウイルス感染症」についても、「未知」であり、「いかに解決していくか」ということが、長期間経ってもまだまだ先行きが見えない現状です。

このような時代で大切になってくることは、「最適解」、「適正解」を探し、模索し考えるということになります。

そのためには幼児期から、「子どもたちが自ら選択して自己決定していくこと」、「自分の思いを表現すること」、「自分と他者や外の世界との違いから生まれる葛藤などを乗り越えていくこと」などは大変重要な経験となってきます。

 

現在当園では、子どもたちが普段の活動や、行事に向けての活動においても、上記のようなことを踏まえて活動を考えていこうとしています。

また、もう一つ大切な視点としては、「知ったことや経験したことを、違う場面や文脈で活用できる」ということです。これは小学校以上の授業でも大変重要にされている視点です。

「習ったことをその場で指示通りしたらできた」、「言われたやり方で問題を解いたら自分でできた」というようなスキルではなく、そのスキルを超えて、違う場面で活用できるということを重視していく必要性があります。

例えば幼稚園の行事として、運動会がありますがこれを例に考えてみます。

①運動会であらかじめ決められた振り付けや立ち位置を正確に覚えたり、練習も運動会当日も、先生の指示をよく聞いたりし、運動会当日滞りなく披露できた

②運動会で表現したいことを話し合う中で、いざこざが起きたり葛藤が起きたりしてなかなか進まない。何とか合意して迎えた運動会当日では、途中で演技が練習の通りいかなかったところがあったが、子ども同士が次の動きをその場で伝え合うなど、当日の想定時間をやや超えたが、最後まで粘り強く踊り続けた。

 

上記2つの展開について、①などはトラブルもなく、予定通りできたという点で、「見え方」がきれいに見えることがあります。またきちんと指示を聞くことが出来て、「規律正しい」と映るかもしれません。しかし、①では、大人(保育者)の指示を聞いて、反復することや、当日の成功を追求し、そこを第一優先にしてしまうことで、子どもが自ら考える機会を大きく奪ってしまうことになります。

「きらびやかな盛大な行事」は一見すると、「できなかったことができるようになった」、「先生の言うことをきちんと聞いて行動できるようになった」など、育ったように見える部分がありますが、その要素を追求しすぎることで、幼児教育が大切にしている、子どもの主体的な活動の機会を失うことに繋がってしまうということです。

 

当園でも運動会や発表会などの行事がありますが、何より大切にしていることは、「その行事が終わった後でも、子どもたちの中に余韻が残ること」、例えば運動会で踊ったダンスを保育室の遊びのコーナーで再現してお客さんと演者になりきり遊んでいるような姿です。そして、前述したように、「知ったことや経験したことを、違う場面や文脈で活用できる」ということに繋がっていくのではないかと考えます。

本年度は様々な制約下のもと、保育活動及び行事の実施となっておりますが、このような「学ぶということ」、「育つということ」を当園の中でも意識をしながら、保育活動を考えていきたいと思います。

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